Game of Thrones Season 8 | Trailer, Photos, Guides & More | HBO
ついに終わってしまった『ゲーム・オブ・スローンズ最終章』。いつもならば、見終わったあとにTwitterやら他の人の感想・考察ブログを眺めてしまうんですが、最終回はあまりにも余韻がハンパなく、自分なりに咀嚼・整理に時間がかかっています。
まだまだ余韻は収まりませんが、ここらへんで一度アウトプットも兼ねて、感想書いてみたいと思います。今回も長いよ~~
正直、いろんな大人の都合とはいえ、たった6話しかなく、結末ありきのご都合主義的展開だったことは否めません。今まで丁寧にシーズンを進んできたからこそ、最終章の駆け足っぷりが目立ってしまった感のあるシーズン8でしたが、本当は制作側もしっかり作り込みたかったと思うのよ。それでも限られた条件のなかでよくぞここまで締めくくってくれたと、制作者のみなさまにまず拍手を送りたい! ありがとう!GOT!
全シリーズを思い返してみると、あのラストのために最初から作られてきたのだとしたら(原作がないので定かではないのよ)、なんと壮大な物語だったのだろうと驚きしかありません。だって、誰が鉄の玉座に座るのかってことが前提だと思ってきたし、タイトルだって「椅子取りゲーム」ってことでしょ? それが最後の最後で、座るどころか溶かされた上に、最初からすでにあの人が座ってたんだねっていうオチ(と思っている)。特にあの人視点に立ってみると鳥肌がたつ。
すべてこのラストになるためにそれまでに起こったことは善も悪もないってことになるし、必要なことだったともいえる。あーあーあー、もう、今まで起こったあのこともこのことも「運命」という言葉で片付けてしまっていいのかって話だけど、あの人視点ならそうなるんだよ~~。すべてのことが全部繋がっているなんて~~~!
※注意※
このあと完全にネタバレしますので、観ていない方はどうかお願いですから観てからお読みください。最終回はなにも知らないまっさらな状態で期待を裏切られてください!
予想を裏切られた善と悪
ジョンが今まで約束を破りながらも、ナイツウォッチや野人たちをまとめたことや、夜の王とその軍団との戦は盛り上がりもすごかったし、メインイベントのように見えるんだけど、実はメインではなかったという展開。これは完全に予想を裏切られましたね。夜の王との戦いで、血統や旗、部族を越えて1つの目的を果たせることへの象徴的出来事として印象づけたかと思えば、そういう世界観とは対照的な、サーセイ(悪)vsデナーリス(正義・大義)という大きな戦争で、さも正義が勝つように思わせるS8-5までの展開。
それが一転、S8-5の「鐘」によって、こちらが思う(思わされてきた)「正義」が打ち砕かれることになり、正義とはなんなのか、そもそも正義なんてあったのかを問われることなった気がしています。
デナーリスがやってきたことは、悪を成敗し、人々を解放しているかのように見えて、ただの殺戮と恐怖による支配だったことに最後の最後に気付かされるわけよ。そのことを決定づけたのは、崩壊したレッドキープで軍を前に演説していたデナーリスの言葉にしっかり表されていた。「戦いは続きます」と。世界中の人々を解放するという大義を掲げて殺戮を続けようとすることを、まるでそれが正しいことのように宣言するデナーリス。
デナーリスは忠誠心のあるものたちだけの世界を作ろうという妄信・妄想状態。それは一見聞こえはいいが、忠誠心というのは「自分の下にいる者たちが自分に忠誠を誓っている」のが前提での話であって、恐怖による支配となんら変わりはないことに気付いていないし、天国だとすら思っている。忠誠心のあるものなら善がわかるとまで言い切る。そこへ疑問を投げかけたジョン。やっと仕事してくれたよ。
個人的にもっとショックだったのは、観ている自分もいつのまにか勧善懲悪が染みついて、デナーリスの行ってきたことを悪を成敗する「善」だと何の疑いもしない視点だったということ。たぶん、視聴者ほとんどがそういう「前提」だったんじゃないかなと思う。いつだってヒーローやヒロインがいて悪を成敗してくれる。それこそが善だと疑いもしないで刷り込まれてきたんだもの。
そこへ、最終回では本当にそれでいいのかと、ティリオンのセリフによって明確に突きつけられたんだよね。自分たちの望む世界を作るために邪魔な者は殺していいのか。悪人を成敗して焼き尽くし、善人だけ残せばそれでいいのか? それで本当に善人だけ残るのか? そもそも善人とはなんなのか。悪人を焼き尽くしたり、敵対するものを殺すことが善人なのか。殺された恨みを晴らすことが善人なのか。善人は間違わないのか。
GOTに出てきたほぼすべてのキャラが、愛ゆえに義務を殺し、愚かなことを繰り返してきた。善と悪なんて、どっちかに立てば必ずどっちかが現れる。ジェイミーやグレイワームがわかりやすいかな。愛のために義務を殺して「悪」とされる行為をなんなく行うじゃないか。
ティリオンも本心を認める
ラニスター家の人間とはいえ、いい境遇だったとはいいきれず、むしろ不遇な人生だったティリオンが何より願っていたのは、強い者も弱い者も認め合うよりよい世界。誰よりも弱者に優しいティリオンだったからこそ、デナーリスが出会い当初から掲げていた「奴隷解放」というワードが響かないわけがない。よりよい世界を作りたい気持ちはデナーリスと一緒なはずだったし、だから共にその世界を作ろうと忠誠を誓ったはずだった。
ヴァリスの進言もあってうすうす気付いてはいたけれど、女王を愛していたし、信じていたかったからこそ、デナーリスに対する違和感を認めたくなかったんだよね。S8-5の「鐘」はティリオンにとってデナーリスに対する忠誠心と「信じたい気持ち」を表していたのだろうと思う。あの鐘の音で、サーセイの降伏を受け入れ、攻撃を止めていたら・・・。ここですんなりと予想通りで終わらないのがGOTらしい。
最終話で壊れた鐘が街に転がっていた描写は、ティリオンの絶望そのもの。かつてベイラー大聖堂を無差別に爆破したサーセイを思い起こさせるし、攻撃の手を緩めず無差別に殺戮を続けたデナーリスへ対する絶望でもある。こうしてみると、サーセイとデナーリスは同じ穴の狢だったってことだよね。
ティリオンががれきの下からジェイミーとサーセイの亡骸を見つけたとき、デナーリスの側近にいたときには見えなかったこと、つまり、無差別に虐殺することは正義ではなく、自分の思っていた正義がデナーリスとは違っていたこと、敵だろうが味方だろうが愛する人を守りたい気持ちに変わりはないし、失ってはじめてティリオン自身も気付くわけよね。今までのラニスターに対する思いやジェイミーへの兄弟愛が溢れすぎて、観ているこっちも泣いたわ~~~。今年度エミー賞決定なんじゃないの?
ティリオンが女王への反逆罪で捕まってもなお、なにもいえないジョン・スノウな場面にはまいった。アリアが進言してもなお「女王が決めること」とかぬかすのかと。へたれもここまできたら呆れてものもいえない。アリア、ここらで一発クイーンスレイヤーとして活躍してくれと思ったのに、アリアは前回で復讐リストはやめちゃったし、その展開はなさそう。ここらへんは観ている側としてもモヤモヤしたシーン。でも、このモヤモヤも、そのあとに続く衝撃の出来事を盛りあげることになるとは思いもしなかったわ。
いい意味で裏切られたジョンの選択
捕虜になったティリオンとの面会で、「裏切りになるから言わないだけだ」と指摘され、さらにジョンの命すら危ないのだと、デナーリスへの違和感を突きつけられるわけよね。ジョンの選択によって世界が変わることをティリオンは進言するのに、ジョンはますます苦悩し、それでも「決断は女王が下す」とかいいやがる。ここで視聴者をググーッとひっぱるねぇ。ジョン、イライラしたわー。
女王のほうへ向かう途中に、雪に埋もれたドロゴンからセキュリーチェックを受け、ニオイでチェックスルーするジョン。ここもスターク(デナーリスを認めていない立場)とターガリエン(王位継承)に迷うジョンを対比しているみたいに見えたわ。
玉座の前でいろんな思いにふけっていたであろうデナーリス。観ているこちらも今までのいろんな物語を思い返したわよね。ドスラク人に嫁入りしてからここまでくるのにいろいろ大変だったよねって。私たちもデナーリスが悪人から人々を救い、救世主であり善人だと思っていたよって。
ここまで引っ張って引っ張って、デナーリス優位か、それとも血統的にジョンなのか、いずれにしても、もう鉄の玉座を目の前にして、いよいよ選択のときがきたと盛り上がってきたわけよーー!
過ちを犯してきたものたちを許すこと、慈悲深い世界を作ることを説くジョンと、これから作ろうとする善を見極めるものたちだけの世界で、それ以外のものは排除するというデナーリス。お互いによりよき世界を求めているのに、完全に乖離しているのは明白。ジョンにも同意を求めるデナーリスは、もはやまっとうな考えを持っている人間とは言いがたく、狂信的になってしまった。
それでもまだ「愛している」といって近づくジョン。この期に及んでまだいうか!とほとほと呆れていたら、なんと! 考えて考えて考えて決断した結果が、クイーンスレイヤー・ジョンになるとは! シーズン8に入ってからろくに活躍もせず、同じ言葉の繰り返しだとヘタレ扱いしてきたけど、この大仕事のために抑えて抑えて来たのは、苦悩の先の決断を際立たせるためだったとは。この予想はなかったわ。てっきりアリアがスレイヤーになるんだとばかり・・・。S8-5の後半でやたらアリア視点を強調してたし、意味ありげに白い馬に乗ったりして、あれはわざとミスリードさせたかったのかね?
デナーリス母ちゃんが死んだことで怒り狂ったであろうドロゴンが、てっきりジョンをドラカリスするのかと思ったら(してくれてもよかったのに)、血統やら家による王位継承・統治という権力の輪を壊したかったデナーリスの思いをくみ取ったかのように、その歴史の象徴である玉座を溶かしたシーンはすんごい泣いた~~~。ああ、これで権力の輪の終焉なんだと。こんなものがあるから母ちゃん苦労したしね!
ジョンはさ、民のために平和を望む気持ちはデナーリスと同じ思いだったろうし、愛していたことも嘘じゃない。デナーリスを愛していても、それとは別に平和と正義の意識のずれが自分の中にあるということを認めたってことだよね。
今までちょいちょい戦闘中に戦意喪失するシーンがみられたのは、ジョンのむやみに無差別に戦いたくないという平和思想の現れだったのかと合点(そこらへんが半分スタークの血のおかげ?で、いいストッパーにだったのかな)。
ジョンはどんな血にせよ、その気持ちに嘘はつきたくないし、これ以上殺戮が続くのは避けたいという結論に達したのだと思う。思えば、シーズン7からバカ正直に「嘘はつきたくない」といって地雷を踏みまくったジョン。彼もまた、シオン同様、アイデンティティを模索してきた1人だけど、落とし子、スターク、ターガリエンと揺れまくって、最後の最後に鉄の玉座が物理的になくなった今、「自分に嘘はつかない」という自己の確立ができたことは、ジョンにとっての血統を超えた救いだったかもしれないよね。これでもう後継者がどうとか悩まなくていいんだもの。
さらにいうなら、「権力の輪を壊す」ということが互いの思いの根底にあるのだとしたら、ジョンの行為は身をもってターガリエンの血を途絶えさせ、血統による支配を終わらせたことになるのかなとも思った(野人と子ども作ったら別だけど)。デナーリスが王位継承権をジョンに奪われる脅威から、ジョンが命を奪うことで解放したことになるし、ジョン自身も罪人になったことにより、事実上の権利放棄。結果は悲惨だけれど、お互いの望みは叶ったんだよ。
それにしても、ジョンの「自分に嘘はつかない」という決断は、必ずしもジョンにとって華々しい栄光をもたらすものではないというのも、まったく予想だにしなかったわ。もうちょっとジョンの処遇はいいのかな~なんて思っていたし、王位継承権からしてジョンが玉座に座ると思っていたからね。だけど、GOTはこちらの予想をはるかに超えてきた。私の稚拙で日本のドラマに毒されたストーリー予想なんて、まったく及びもしなかった・・・。
少しのあいだでも、統治者として君臨したデナーリスを手にかけたとなれば、ジョンは反逆罪となるのは当然のことだし、司令官に任命されたグレイワームとデナーリス軍がごっそり残っている以上、ただでは済まない。本来なら処刑されても仕方ないところだけど、新しい王が決まってから処遇を決めたらという北部諸公たちの意見や、グレイワームの心情を考慮して、決めた末路がまたしてもカーセルブラック行きって! 私も「あそこ、まだあるの?」って思ったわよ。落とし子じゃなく今度は罪人として行くって。ジョンを英雄にしないで終わらせたGOT、やるじゃないの~~~~。
続く。