7月9日から始まったTBSドラマ『Heaven?~ご苦楽レストラン』って、どっちがメインタイトルだろう。ピンとこないよ。福田雄一以外でコメディドラマがなかなか作られないので、そういう点でもちょっとだけ期待しつつ、石原さとみ目当てで視聴しました。
以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。
あれ? なんだろ、このもっさり感
もう出尽くした感のあるレストラン再生ストーリー。コメディと銘打っているので確かにテイストはコメディなんだけど、観ている方としてはそんなに笑えるものでもなく、どこかで大笑いを期待してたのに、あれ? なんか笑いがこない。
オーナーを始めとするこのレストランにあつまったキャラたちがポンコツで、そのポンコツっぷりで笑ってくれよということなんだろうし、ここ、笑うところだよっていうのもわかったけど、笑いがこない。笑いのツボが個人的に違うのかしら? ほら、年齢行くとちょっとやそっとじゃ笑えないからさ。
ストーリーの概要をざっくりいうと、オーナーをはじめとするメンバーもレストランの立地も墓地の隣とかまともなものが何一つない。オーナーはレストランの理想が高いわりには準備不足だったり読みが甘く、プレオープンの招待状すらまともに出せない。とにかくなにもできないんだけど、そのおかげでポンコツスタッフたちが自分たちでなんとかしようと奮起するっていう話。
とにかく石原さとみにぶっ飛んだおしゃれセレブをやらせたくて企画したみたいなことはわかった。さらに、キャラの心の声が頭上にCGで現れてぼやくとか、この演出がどこかでみたなと思ったら『民王』まんま。それが逆にテンポを悪くしているように見えてウザい。効果音もくどい。漫画に近づけたい気持ちはわかるけど、なにも『民王』まんまじゃなくても…。
コメディといいたいマジメなドラマ?
このドラマは漫画原作で『動物のお医者さん』などを描いた佐々木倫子さん。漫画で読むからこその独特の間と笑いだし、原作では本当に次々に笑いを繰り出してくるんですよ。やはり原作はおもしろい! 佐々木倫子さん独特の世界観からくるものがあるんだなとつくづく思いましたよね。
原作知らずにドラマを観てもちょっと違和感あって、原作を改めて読んでみたら、なるほどこれは映像化難しいでしょって思いましたよね。原作のテンションすごいもん。かなり原作に近づけてドラマ化しているのはわかったけど、それでも狙ったであろう演出ポイントで笑いがこみ上げない。
つまらなく感じてしまったのはなぜだろうと考えてみると、やっぱりテンポの悪さなのかなという結論。
キャスティングはみなポテンシャルのある俳優さんたちだし、脚本さえ良ければもっと違っていたはず。石原さとみも悪くないんだけど、すごくいいとも言い切れない中途半端さ。
伊賀観役の福士蒼汰も悪くないけど、個人的にはこれじゃない感なのよ。私にはサカナクションの山口一郎にしかみえないし、むしろここは中川大志でしょう! 川合太一役の志尊淳、原作超えたとか言われているけど、そお?
他のおじさんたちは別にいいとして、やっぱりコメディの素地のある役者さんと演出を揃えたほうがいいかなぁ(おじさんたちはコメディできる人たちですよ)。民王つながりで菅田将暉とか、存在自体がおもしろいムロさん、佐藤二朗さん、賀来賢人、シソンヌじろうとかさ。あ、福田組になっちゃうか。コメディやるなら『今日から俺は!』くらい振り切らないとダメよねって話よ。
おもしろいコメディ作品っていうと思い当たるところで宮藤官九郎と福田雄一。クドカンのようにキャラの個性を爆発させるようなおもしろいセリフとその応酬、福田組みたいに俳優に脚本以上のおもしろいことを強要して、よりおもしろいものを生み出すとか、もともとお笑いが好きじゃないとかけないなと思うんですよね。
作風は違うけど、このお二方に関してはちゃんと笑いを取ることを目的にしているし、どこで締めてどこで緩めるかという緩急もわかっているから、ちゃんと笑わせるし泣かせることもできる。たとえ漫画原作があってもさらにおもしろくする手腕はすごいなと思うし、期待を裏切らないのがすごいのよ。
頼むから、このお二方みたいにきっちりコメディで笑わせてくれよ!と期待しちゃっただけに、失望感が半端なかったの。
『Heaven?~』はコメディ独特のテンポとか緩急、言い回しが原作に忠実になろうとして、逆に過剰演出みたいになって面白さが失速してしまった印象。『民王』のほうがよっぽどテンポよかったよ。
なのに、よけい中途半端になってしまったのはなぜ? もったいない! これだけポテンシャルの高い俳優さんたちをキャスティングしておきながら全員活かしきれていないなんて…。俳優さんたちはいたって脚本通りマジメに演じられていると思うんだけど、コメディ原作の映像化って難しいし、やはり脚本と演出の手腕にかかっているということなんだろうな。
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石原さとみの無駄遣い
そんで、主演の石原さとみ。彼女ありきの企画なのはわかったけど、ぜんぜん活かされていない気がする。あの名作ドラマ『アンナチュラル』を排出したTBSとは思えない扱いじゃない? まだ『校閲ガール』のほうがテンポよくてよかったわ。
なんでこんなにイラつくのかというと、『アンナチュラル』の石原さとみが超絶好きだから。彼女は可愛いゆえにルックス先行でおしゃれ系ドラマにキャスティングされがちだけど、『アンナチュラル』の抑え気味で絶望の中で生きていく演技がすごくよかったのよ!!!! ああいう石原さとみがもっと観たいし、深みのある演技をしてほしいわけ。
なのに、なのによおお! その後のドラマ『高嶺の花』は脚本が野島伸司ってだけでドロドロ設定はいいとしても、ただただ躁鬱で、現代設定にもかかわらず古臭い昭和なセリフで魅力半減。つくづく作品に恵まれない。お願い野木さん、石原さとみを救済する本書いて~~~。なんなら『アンナチュラル』続編で~~。
なーんか今まで演じてきた「ちょっと困ったちゃん、でも可愛いから許される」キャラの延長をやっているみたいで、正直言って新鮮味がない。ぶっちゃけ同じ演技。てことはやっぱり、脚本か演出か監督がマズイってことでしょーー(本人の力量だったらそれはそれで悲しいけどさ)。ちゃんとコメディならコメディのテンポ感演出しようよ~~。石原さとみの新境地を開拓しようよ。
せっかく映画『シン・ゴジラ』、ドラマ『アンナチュラル』で演技派の扉を開けたのに~~ただただおしゃれでかわいいぶっ飛んだ石原さとみをみたいんじゃない。どうせなら、コッテコテのお笑いを追求した新しい石原さとみが観たかったなぁ。
石原さとみに免じて1話だけは観てみようと思ったけど、完全に時間の無駄でした。原作はめちゃくちゃおもしろいので、気が向いたら2話見るかなくらいの意欲。そのテンポが出ないなら今後の視聴はナシかな。
来週からいよいよ同じ火曜日枠で三浦春馬主演の『TWO WEEKS』が始まるので気持ちはもうそっちいっています。うーん、春馬~~♪