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【義母と娘のブルース】最終回感想:主婦という概念の終わりと家族は「作るもの」

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Shinichiro Hamazaki | Flickr

 

綾瀬はるか×「おんな城主直虎」の森下さん脚本ということで興味がわいて視聴したこのドラマ。1話からぶっ飛んでいましたね。あだ名が戦国部長といわれる亜紀子のセリフがまるで大河ドラマの続き?をみているような既視感。亜希子の時代劇ばりの言い回しが妙にこなれた感。綾瀬はるかも大河ドラマ経験済みということもあり、こういう時代劇のような大げさな演技もこなれたもの。綾瀬はるかじゃないとできない役だったでしょうし、過去作でも森下作品でのびのび演技していたことを思えば、当然の配役だったのかな。

 

以下、ネタバレを含みます。観ていない方はご注意ください。

 

 

 

やっぱり「漫画の世界」なんだけど

いきなり結婚相手の娘に名刺差しだすところからもう漫画。原作が漫画なので当たり前なんだけど、いきなり違和感しかなかった1話。ええ!?なに子供に向かって名刺?履歴書出す? でもこれがドラマ冒頭のつかみだったわけで、まんまと掴まれてしまった。これはまじめな親子愛ものと思ってはいけない。漫画をベースにしたコメディで、伏線だのドロドロだの頭を使わないで楽しむものなのだと1話を見終わって理解し、結果、最後まで楽しんでみちゃっいました。

 

戦国部長・亜希子は仕事もできて部下や会社からは一目置かれる仕事人。仕事以外は興味がない少々として、化粧も最低限、スーツや洋服も決して派手ではないけれどこぎれいにしている程度。徹底したキャリアウーマンで、最後まであの調子で気持ちいいまでに振り切られてしまった。

 

キャスティングのバランスも見事で、みゆき役の子役ちゃんもよかったし、高校生になったみゆき役の上白石萌歌が絶妙すぎるくらいキャラに合っていた。竹野内豊のあの緩さの中にある強さが絶妙。佐藤健はいわずもがなカメレオン俳優ですよ。朝ドラ「半分、青い」の律と正反対のチャラくてお馬鹿さんな麦田の成長を見事に演じていたし。後半から井之脇海が出たとき思わず万福じゃん(by直虎)みゆきや麦田のサポートする役柄だなんて、やっぱり万福を現代でもやらせたかったとしか思えない。不動産屋を経営している下山役・麻生祐未も「半分、青い」では役名が「麦」というのも偶然すぎるわ。

 

朝ドラに佐藤健が出ていることもあって、役柄が対照的なのも話題になっていましたが、どちらのドラマでもハイタッチシーンが偶然かぶったりして、そういうところも楽しむ要素でしたね。


1話スタート時は亜希子が女性としての色気もなく、あくまでもビジネススタイル。極端なまでの礼儀正しさが奇妙ですらあったのに、話が進んでいくたびにその一挙手一投足の生真面目さが滑稽を通り越して愛おしさすら感じてくる不思議さ。目的達成のために一心不乱になるところがなんと魅力的なことか。綾瀬はるかがとにかく可愛すぎた。

 

 

主婦の新しい概念

このドラマ、漫画を原作としたコメディで楽しむだけじゃなく、女性のライフステージの変化に合わせたキャリアチェンジも裏テーマ?と勝手に考えてみました。あまりべたべたな恋愛要素を出さず、最後まで義母と娘の関係に終始し、みゆきの父である良一や麦田との関係も比較的ドライ。あくまでも主役は義母と娘。血のつながりのない親子関係を結びながら、亜希子が生活の中でもビジネスを活かした立ち振る舞いで乗り越えていく。しかも、ビジネスの現場から離れていても、今いる場所でビジネス思考を活かしてパート勤めをし、最終回ではその実績が買われてまたビジネスの世界へ飛び立つラスト。まあ、亜希子が元々有能な設定だからでしょと思いたくなりますが、ビジネス思考をこれほどまで生活に取り入れ、その思考を忘れるどころか生活の一部として活かし続けていた。これこそが、女性がどんなにライフステージが変わってもまた形を変えて戻っていけるゆえんだよなと思ったし、ぶっちゃけ、男性よりも柔軟で変化に対応できるという利点でもある。主婦になったからって仕事を諦めるのではなくて、単なる異動や配置転換みたいなもの。ビジネス感覚は生活に活かせるし、仕事と家庭を切り離して考えなくてもいいんだ。たぶん亜希子にはいわゆる一般的な「主婦」という概念を持ち合わせていなかったことや、良一との関係が甘くてベタベタな恋愛関係にみえなかったこと、名刺や履歴書という突飛な行動から、みゆきの母親へ「キャリアチェンジ」しただけにしかみえなかったんですよ。これは新しい視点じゃないかと思いましたよね。まったくネガティブにみえない。そっか、主婦って会社の異動みたいなものかもね。そう思うと、結婚して主婦だから○○とか卑屈っぽくなる理由がない。恋愛関係から結婚して夫婦になるより、目的がはっきりして建設的な関係を築くことは人としてまっとうなことだ。まして、亜希子は一般的な概念で周りに詰めよられても、きちんと分析した上で適切に反論・対処する。めちゃくちゃかっこいい。ドラマのようにはいかなくても、人間関係はそういう意識でいたいと思いましたよ。

 

 

家族は作るもの

普通、家にいたらぐーたらしたり、家族に甘えて感情的になってはいざこざも絶えなかったりするのが家族。亜希子には最初から「家族」とはどういうものかという概念がなかったからこそ、ビジネススキルを応用するしかなく、親からの愛ということがどういうことかわからないまま(トラウマとも思っていない模様)、果敢に「家族を作る」ことに懸命になるという点に好感がもてたんですよね。よくよく考えたら、夫婦なんて元々赤の他人同士。関係を作る努力って必要だよなと初心に返った気持ちにさせられました。

 

亜希子だけじゃなく、みゆきもまた奇妙な母親に戸惑い拒絶しながらも、血縁かどうか関係なく人を受け入れるということを学んでいくドラマ前半。後半も麦田がメインになってさらなる成長をみせるところなんかもみゆきの成長とあいまって飽きさせない。直虎のときもそうだったけど、人のいいところを活かすという視点(ダメダメな麦田を奮い立たせるところとか)がこのドラマでも表現されていて、私も会社勤めのときこんな有能な上司がいたらなーと思ったわ。


家族愛系のドラマってなにかとトラウマをダシにして拗れることこそがストーリーのキモになりがちだけど、「義母と娘のブルース」はそれがない。親を亡くし愛がわからなくても一生懸命生きることができる。本来なら、亜希子の影になる部分をどこかに見え隠れさせてもいいのにそれすら見せない(演出上の意図なのかどうかはわからないけど)。最初はなんでここまでバカみたいにマジメに取り組んで進もうとするのか共感できなかったし、最終話で亜希子の過去が語られてもあまりに淡々と憂いなく語るので、心からの共感に至らない。もしかしたら、これは作り手側が、過去を悲しいものにするのではなくて、今を一生懸命生きることに主眼を置いて描いたのかと考えれば、気持ちの落としどころとしては納得がいく。

 

ドライなほどの亜希子にだんだん好感を持てたのは、料理も最初からうまくできたわけじゃなく、一生懸命家族の味を覚えようとハンバーグづくりにPDCAをまわしたり、家族を作るということに対して「努力」を惜しまない。しかも大手企業の部長職を蹴ってまで主婦業に「キャリアチェンジ」。主婦としてもいかに家事をまわし、経済的なことを考えていくか(デイトレしてたしね)、亜希子は主婦業に専念といいながら、しっかり家庭を仕事として切り盛りする。亜希子の中では主婦業は業務でありミッションなのよ。PTAの行事や父兄の関係すらビジネスを応用して乗り切ろうとするも、結局は人力の大切さを思い知らされる人間くさい部分を投入する展開のメリハリ。大河ドラマなみの緊迫感もあったりして、飽きない展開。

 

義理の母だからこその一線を引いたような関わり方にもみえるけど、血縁がどうこうというよりも、人を尊重することはビジネスだろうが家族だろうが同じなんですよ。親しき仲にも礼儀ありまくり、娘に土下座はやり過ぎだけどビジネス的表現しかできない亜希子が、なんとも不器用すぎて回を追うごとにだんだん愛おしくなってくる。一生懸命な人をみているだけで応援したくなるのってこういうのだよなと思わせてくれた。

 

自分におきかえて考えてみると、亜希子のように頭脳明晰じゃないけれども、旧来の「主婦」という枠にいる必要なんてないなと小さな勇気と視点をもらえたことは、私の中で思ってもみない収穫でした。主婦は単に家のことをやる人なんじゃなく、互いに家族を作る共同創造者でありミッション(「逃げ恥」だったらCEOですね)、そして収入を生み出すこともできるクリエイターでもあるのだ。主婦だからってなにもできないわけじゃない。

 

かつてのドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも、恋愛や夫婦関係について、新たなくさびを打ち込まれたような衝撃を受けましたが、さらに家族とは、夫婦とは、主婦とはこうあるべし!なんていう古い概念が壊れて、新しい概念がさらに広げられたようなドラマだった気がします。

 

最後まで、亜希子は麦田とくっつくわけでもなく、恋愛要素をまったく寄せ付けない徹底した作り、ここまでくるとお見事としかいいようがない。これも恋愛になりそうでならない直虎と同じ。でも、そんな女性がいてもいいじゃないかという寛容な気持ちにさせてくれる終わり方。ベーカリー麦田の再生展開のあたりはビジネス視点でみても面白いドラマでした。