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【チェルノブイリ】感想:事実はこうして隠される。日本人は絶対観るべきドラマ

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Steve Walker | Flickr

 

率直に言うよ。HBO金ありすぎ!! 『ゲーム・オブ・スローンズ最終章』終わってから、世間では「ゲースロ超え」的に鳴り物入りで紹介されていた海外ドラマ。やっと視聴しました。

 

お金がかかっている点ではさすがHBO。ゲースロ並かそれ以上にお金かけているのはすごくよくわかったし、制作側の情報収集力と撮影現場のリアリティはすごすぎる。ただただ「怖い」。それでも目をそらすことができないくらい引き込まれました。


以下、ネタバレが含まれますのでご注意を! 

 

www.star-ch.jp

 

 

いろんな意味で怖かった

今でこそ、私たち日本人は311で起こった原発事故によって原発という存在がより身近になり、放射能の危険性に対する知識も少しだけついた気がしている。とはいえ、専門家でもない限り本当の危険性はわからないし、原発から地理的に離れていることから、どこかぼやけて見ないふりをして遠ざけているような、そんな感覚すらあるのが正直なところなんだけど、真実に基づいたドラマということもあり、劇中で核物理学者の口から語られる被爆の説明が恐ろしくてたまらなくなる。

 

チェルノブイリの事故は1986年、今から33年前の旧ソビエト時代の話。ほんの少し前に本当にあった話だけれども、今の私たちの認識や政府の対応は当時とさほど変わっていないのではないかという諦めと絶望のようなやるせなさが1話から襲ってくるのよ。

 

過去の過ちから、今でこそ世界に設置されている原発は厳重な注意を払って扱っているだろうということは理解できる。だけど、1086年当時の現場の状況(事故現場を見に行くのに防護服を着ないとか)や、火事を含む事故なのに原発について楽観的すぎるとか、原発付近の住民に、原発の危険性の説明すらされていないとか、そりゃあもう今では考えられない状況だったわけ。今よりも危険性に対する認識がない。

 

事故が起こったとき、発電所の方向から閃光と衝撃波が来て、それを単なる火災事故と思って見物している住民たち。その事故の影響で空気中に漂う「死の灰」を「キラキラしてきれい」と喜んでいる演出が美しいのだけど、同時にそれがものすごく怖さを演出する。劇中の住民と同じく、無知であることの恐怖。

 

さらに翌日、街で子どもたちがうふふキャハハしている場面で、鳥が路上に落下し、ピクピクして死ぬシーンがさらなる恐怖を煽る。すでに放射能が飛散しているよってことだもの。何も知らされていないからこそよけい怖い。確実にみんな被爆しているってことだから。

 

また、発電所の作業員たちも、上層部以外の人間はそこまで危険であることを知らされていないのか、防護服を着ないまま様子を見に行かされ、被爆して放射線やけどや体調不良を訴えたかと思うと、ほどなくして死んでしまったりする。

 

火事の消火活動にあたった消防士たちもまさか放射能漏れしているとは思わず、異様な現場の状況だと気づいても、そこまで危険かどうかの認識がないのでただただ業務遂行するのみ。この描写もいかに現場レベルで知識が共有されていなかったかが描かれてて、ただただ呆然としてしまった。知らないということはこんなにも怖いことなのか。

 

偉い人やら関係者が集まって対策をしようとするわけだけど、どいつもこいつも都合よくしか考えない。「危なくない、ただの火災だ」と片付けようと発電所の所長や現場のリーダーは保身や隠蔽に走る。

 

ちゃんと数値を計ろうということになったとき「放射能測定器も性能がいいものは金庫にしまってある」というセリフにも驚いた。なんとずさんなの! 普段は性能が適当なやつを日常的に使っているんだねということだし、もっと驚いたのが、その性能がいいであろう測定器が「値を振り切った」と報告しても、上層部は「故障しているんだ」と言い放つわけよ。何を根拠に? あんた測定器作った人? 危機的状況で信じたくない気持ちもわかるけど、この期に及んで現実を直視したがらない人間の保身というか身勝手さというか。

 

怖い、怖すぎる。大きな国で、しかも共産圏ともなると守るものが大きすぎて、国の威信を守るためならどんな犠牲もいとわないんだね。原発の後処理に対する対応がまさにそれを現していた。「国の仕事」と言えば誰も逆らえないんだもの。

 

火災がただごとではないことに気づいた作業員が、上層部に現場の様子を見に行くよう命令されるんだけど、仲間の作業員が放射能やけを起こすなどの異常を知っているので、行きたいくない!と拒絶するんだけど拒みきれず、仕方なく炉心を見に行くのね。そしてまたたく間に放射能やけどを起こし顔が真っ赤になる作業員。もう完全に高レベルの放射能が飛散しまくっているわけ。

 

現場、地域レベルで放射能についての情報が共有されていないという事実とその恐怖。だって、それは本当にあったことなのよ。33年経った今でもその影響が続いていて終わっていないわけだし。

 

もうね、1話から衝撃と恐怖にじわじわと打ちのめされていく。それは自分が原発や放射能についての認識や危険性を、311をきっかけに少なからず知っているからこそ恐ろしさが半端ないんだよね。

 

核物理学者の存在

原子力の専門家である科学者のレガソフが、現実を見ようとしないやからに、放射能や原発の仕組みを何度も繰り返し周りに説明していくんだけど、最初はなかなか理解されない。だけど、根気よく放射能を浴びたらどうなるのかを説明することによって、政府閣僚の副議長シチェルビナが被爆した当事者として放射能を理解していくところも妙にリアルで、シチェルビナの視点=311後の視聴者という見方をすると、回を追う毎に死を意識した人間への我がことのように感じられる。

 

シチェルビナは最初、放射能にまったく無知な状態で責任者として送り込まれた政府の要人。いかにも偉そうな態度なのよ。レガソフから聞いた情報をまんま受け売りして、さも自分は知っているかのような話しぶりまでしていたわけよ。

 

日々の収束作業の監督指示をレガソフと共に行動していくうちに、レガソフから聞く放射能や被爆についての重大さを理解し、さらには自分も被爆していることに驚愕する。

 

そこからシチェルビナは事実を受け止め、政府の人間という前に自身の余命を突きつけられ、命について考えるようになった。ここの展開は、無知な状態から真実を知り受け入れるまで、人はどういうふうに立ち振る舞うのかを、シチェルビナという人物を通して考えてしまった。

 

このドラマは原発事故のドラマではあるけれど、レガソフとシチェルビナの関係性にも注目して欲しいのよね。二人が真実を追えば追うほど、隠匿しようとする周りの風当たりが強くなっていくんだけど、余命幾ばくしかない二人が選択したのは真実を伝えること。

 

人は命の限りを知ったとき、生きているあいだになすべきことを全力でしようとするのだなというところも、過剰な演出していないからこそ心を揺さぶられたなぁ。

 

あと、忘れてはいけないレガソフと同じく核物理学者のホミュックの存在。実在の人物ではなく、ドラマで作り上げられたキャラなんだけど、遠く離れたところで放射能汚染に気づくというのは事実に基づいた設定。いいキャラです。

 

彼女が事故原因究明のために奔走したからこそ、真実がわかってきた側面が被害者の事実確認のほかに、改ざんされた資料の存在や原発の欠陥まで調べ上げたすごい人! おかげで、最終話のカタルシスと絶望がすごいから!! 

 

ここは敢えてネタバレしたくないから書かないけど、原発の欠陥部分の説明がねぇ、「ええ!そんな理由!?」と声に出してしまったくらい、すんごくすんごくショックだったの。そのおかげで安全が守られず(というかわかっていたのなら対策すべきなのに)そのまま放置していた事実。どうしようもないこの気持ち。ぜひ観て体験して欲しい~~~~!

 

被爆した人の描写がエグい

また、既に被爆して病院に運ばれた消防士の妻の行動も、どんなに危険であっても愛する人のそばにいたい気持ちから、自分も触れたら被爆するのをわかっていても、やっぱり触れるよねと思ってしまった。夫婦抱擁シーンがあるんだけど、そこもまた美しくキラキラ演出するわけよ。それは夫婦愛を過剰演出しているのではなくて、抱擁よって被爆しているよという演出かと思うとそら恐ろしいの。

 

しかも、妻は妊娠中。最終話では出産後、4ヶ月で子どもは放射能を溜め込んだことが原因で死亡。なんともはや。

 

それ以外にも現場作業をして被爆した人たちの皮膚のただれが日に日にどんどんただれて、人間とは思えないくらい原型を留めない描写がすごかった。ゲースロで内蔵バーン、クビさっくり切りとか慣れたつもりだったけど、放射能を高濃度で浴びるということはこういうことなのだという現実なわけですよ。本当に恐ろしい以外の何物でもない。

 

最後の最後で、どういう人たちがどのように被爆して亡くなったかが語られるんだけど、爆発直後くらいに現場にいた人たちはひどい高濃度被爆をして一週間くらいで死亡。直接現場作業はしていなくても、現場近くにいたレガソフやシチェルビナも被爆し、あと何年かの余命。劇中ではふたりとも最後の方で被爆が原因と思われる、咳や吐血、抜け毛の症状がでて、最後の語りではシチェルビナもそう長くは生きられなかったとのこと。

 

被爆の度合いで命の長さや症状はさまざまというところまできちんと描いていたのもリアル。これは現実に日本でも起こっていることでしょう。

 

ドラマ後半では、避難区域に残された家畜や動物を殺す作業もいたたまれなくて観ていられなかったし、その作業員の心情も辛いのなんの。

 

悲惨な事故や歴史ものを映像としてみるとき、ニュースのように断片的に見るか、映像制作者によって脚色・演出されて感動巨編的に見るかのどっちかが多いと思うのだけど、事実に基づいた綿密な取材とリアルな現場での撮影、事故現場や作業に関わった人々、被爆した人々のリアルを忠実に描くことに終始しているように感じる。

 

必要以上に登場人物のお涙頂戴ストーリーを盛り込まないことで、観ているこちらに考える「余白」を与えてくれる。これらを観て「あなたはどう思う?」と言われている気さえするので、私は観終わった後すごく考えてしまったし、観た人と語り合いたい気持ちにさせられましたが、周りに観た人いない! 早く夫くん観てちょーだい。

 

事故は終わらない

放射能に関する隠蔽は今も昔も世界のどこも同じだし、今もそれは変わらない。これだけ扱いが大変で危険な放射能はとてつもない強大な力で、いつの間にかそれを持つものに「力をがある」と錯覚させるのだろうね。これさえあれば自分たちは強いのだと。

 

未だにどこぞの国も自国の威厳を保とうとして、真実でないことを報道したり、その影で何かを隠しているんだろうなと思うんだけど、かつての共産圏はとくにそれが顕著だっただわねぇ。これだけ甚大な被害と犠牲者がでたのに、原発事故の死亡者が33人って、なにその事実!? って感じでしょ。

 

実際は70万人と言われているのに。だけど、当時の旧ソ連はそうやって事実を捻じ曲げ、科学者の報告すら処分したというのが最終話のエンドロールできちんと描かれることにはちょっと救われたけど、同時に、今も事故処理は終わっていないという事実もわかるだけに、最後の最後で重々しいショックを受けるわけ。

 

チェルノブイリの事故処理が30年経っても終わってないなら、福島の事故もこの先長くかかると言われたのと同じってことでしょ? 


放射能の被害を受けた国、日本。日本に住むものとして他人事に思えないドラマだったし、これはぜひぜひぜひみんなに観てもらいたいドラマ! 

私、夫にも「絶対観て!」とことあるごとに言っているくらい強く勧めてますもん。

 

娯楽としてのおもしろさではないけれど、これほどまでに事実を克明に描いたドラマはないだろうと思うし、私たちは無知の怖さを思い知る必要があると強く強く思うのよ!!! 

だから、しつこいようだけど太字で強調しちゃうよ、もう! 観てない人はなんとしても観てほしい!! 心からそう思います。

 

 

とにかく映像すごいから

本当にめちゃくちゃになった発電所の現場、セットというかCG合成かもだけどものすごいリアルでしたよ。このあたりはHBO、金に糸目はつけないんだねぇ。ロケ地もチェルノブイリに似た場所でロケーション、廃炉した原発発電所での撮影したとかで、ゲースロの戦闘シーン並の過酷さとリアルさがすごいよ。80年代風の衣装やが画像の色味もリアル。映画並みの見応えですよ。海外ドラマ、ますます映画以上のクオリティになっていくわねー。


今週NHKで特集していた首都直下地震をテーマにしたドラマ『パラレル東京』も、なかなかリアルに近づけててCGもがんばっていた。NHKでここまでやっていいのか!?という演出もあったけど、HBOと比べてしまうとねぇ・・・これは有料とはいえ公共放送の宿命、縛りだらけの日本の放送局では限界があるんだろうなぁ。

 

1話だけでも衝撃なのに、このあともそれが続くことは必至だし回を追う毎に辛くなる。人間の愚かさを目の当たりにするので絶望しかないんだけど、レガソフとシチェルビナ、ホミュックの行動が、未来へ対する一筋の光明となることだけが唯一の救いであり、希望。

 

1話の最初でいきなりレガソフの自殺シーンから始まるんだけど、これは一連の流れから、この行動がただの自殺ではなくどういう意味があるのか最後にわかります。とにかく最終話まで観て、絶望と希望を同時に感じてほしい!


最後に、この事故は「保身」という人間のエゴが原因の人災だったんじゃないかと思う。現場にいた副技師が上の命令を遵守しようとするばっかりに、部下はその犠牲になった。さらにはその事実を隠そうとした国も同じ。もちろん原発の欠陥も原因の一つだけど、この巨大エネルギーをよく知らずに扱ってしまった人間がコントロールできずに起こした事故。

 

福島原発の事故も「予測できなかったこと」という点では同じで、事実を隠匿しようとするのはやはり人間。その人間の性質は今も昔も、未来もきっと変わらないのだろうね。それをこれでもかと観せられたこのドラマ。私たちは事実から目をそらしてはいけない。

 

 

『チェルノブイリ』を観るには

Amazonプライムビデオ内の「スターチャンネルEX」に加入すると、7日間の無料体験期間があるので一気観できますよ。しかも字幕・吹替両方用意されているのがうれしい。私は吹替で視聴しました。無料期間がすぎると月額990円となりますが、元を取れるくらいHBOドラマのラインナップがすごいのでお得感は半端ない!

 

さらに他のHBO作品というと、やっぱり『ゲーム・オブ・スローンズ(シーズン7までみれるようになったよ!)』『ビッグ・リトル・ライズ』シリーズが超おすすめ。

  

 

 

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